駅からの道は近くの大学試験場へ歩く受験生の列が続いていた。
道のところどころにはガードマンが交通整理する姿も見られた。
髪を切ってすぐはどうも幼く見えてしまうらしく
つい先日もコンビニで酒を買うのに少し怪しまれたばかりだった。
今日も「自分は受験生とは違う」とアピールするため
ボランティア会場の皆さんへの熊本土産(くまモンパイ)を入れたキヨスク紙袋を
ガードマンにわざと見せびらかすように携えながら
その大学と同方向にある会場に向かって歩いていった。
携帯アプリの地図で会場の場所は確認済みだ。
二日市駅構内の地図でも念のため確認しておいた。
自分にとって初めての会場だが不安はない。「9:00開始のはずだからちょっと早すぎたかな?」
会場の筑紫野市の人権センター?に着いたのは10分以上も前だった。
まだ誰も来ていない。
そういえば朝からムカムカしていて何も食べていなかった。
歩いてくる間に少し小腹もすいてきた。
近くのコンビニでおにぎりを買い
施設横の公園のベンチでほおばった。
9:00になったが誰も来ない。
「あれ?10:00だったかな?」
時間を間違えてしまったか。
9:00か10:00かあやふやだったけれど
よく確認もせず早い時間の方で始まると考えておけば
時間を間違えても迷惑はかからない。
二日酔いの頭でいちいち調べるのも面倒だったため
早い方の9:00をとって二日市まで来た。
あーこんなことならもっとゆっくり寝ていれば良かった。
まあでも「勘違いして早く来ちゃいましたあ」と
笑い話のネタにできるからいいか。
おにぎり3個を全部平らげ野菜ジュースを飲み干して
コンビニにゴミを捨てに戻りついでにコンビニ内でトイレも済ませ
公園に再び戻り
昨日の飲み会参加者1人1人へお礼と感想そして
「無事旅館入り口の鍵が開いていて中に入れた」という報告のメールをし
それでも飽きたらずFBしながら時間をつぶし
ようやく10:00になった。しかし誰も来なかった。
それどころか会場施設のスタッフさえもいないようだ。
「もしや俺はとんでもない間違いを犯したのではないか」
そこで初めて一抹の不安がよぎった。
今日ボランティア洗浄会があるのは間違いない。
だとしたら開始時間が実は午後からだったか
あるいは今日は旧冷泉小学校で明日が二日市(筑紫野)だったかだ。
午後からだったなら駅に戻って駅前で昼飯を食べるところを探そうか。
冷泉だったなら駅から電車で戻る必要がある。
どっちみち二日市駅に戻った方がいい。
公園のベンチは寒すぎる。
運動を兼ねて駅に戻ることにした。
駅前のスーパーは開店していた。
店中で暖を取りながら代表に電話をしようと考えたが
もし今日の開始が午後からでまだ家で寝ていたら電話をすると迷惑になると思い直し
FBに広くボランティア参加予定者にヘルプを求める文章をアップした。それから20分。
代表からの救いの電話がきた。
「9:00から始まってますよ」
何ですと??
よくよく聞くと
この日は鹿児島に出張で不参加のOさんがたまたまヘルプ文を発見し
代表に電話してくださったとのことだった。
俺は場所を間違えていた。
ただし会場が筑紫野市隣保館(人権センター)というのは間違いなく
さっきまでいた場所は老朽化により別の場所に建てられた新館だった。
行くべき会場(旧館)は
1つ先の路地を曲がって200mほど進んだところにあるとのことだった。
携帯や駅構内の地図は確かに新館を指していた。
そらわかるわけねえ。
まさか建物が2つあったとは。
二日酔いの頭も捨てたもんじゃなかった。
またもやもと来た道を引き返す。
すでに道行く受験生の姿は無い。
ガードマンだけが途中の道ばたで世間話をしている。
信号待ちをしているとそのうちの1人と目が合った。
こっちを見ながらガードマン同士で何やら言っている。
そらお土産袋を抱えて何度も行ったり来たりしてるんだもの。
完全に変な人扱いだよな。
わざと目をそらしてガードマンたちの横を通り過ぎた。
さっきの新館を通り過ぎ
ようやく旧館の近くまで来た。
こうして筑紫野の街中で遭難していた1人の男は
Kさんによって無事保護された。
本当の会場に着いて
代表にここまでのいきさつを話した。
「昨日『今晩は飲み会』と言っていたから
まだ寝てるんだろうと思っていた」と。
失敬な。
でも頑張ったご褒美にと
女子大生グループに入れられた。
なんだそりゃ。
まあでも初対面なのに話しやすい女子大生たちで良かった。
大幅に遅れて会場入りしたために
洗浄を始めてすぐに休憩時間になったが
お土産なのか遅れたお詫びなのか探してもらったお礼なのか既にわからなくなった
「くまモンパイ」を皆さんと一緒に賞味しながら
ちゃっかり熊本宣伝をさせてもらった。
そしてこの文章の中でもちゃっかりアピール。
皆さん九州新幹線で熊本にもおいでください!
そしてご迷惑おかけしました…
延べ20人ほどの少人数でしたが
その分アットホームな雰囲気で
楽しくそして和気藹々と洗浄ボランティアは
はかどったと感じます。
同じ班の女子大生の皆様へ。
Fさん
来週からの東北へのボランティアお気をつけて行ってらっしゃい!
Yさん
1日「バディ」としてお付き合いいただきありがとございました!
そして女子大生ではないが
朝から俺を確保してくださったKさん
ボランティア終了後
俺を拉致して天神にモツ鍋食べに連れていっていただき
ありがとうございました。
最後に救難信号をキャッチしてくださったOさん
今度はぜひご一緒に!
そして本当に最後になりましたが
Sさん
東北土産をありがとうございました!
皆さん
素敵な出逢いをありがとうございました!
またお逢いできる日まで!!
(文責:外田仁士)